ビー玉泥棒

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 その場にいても立ってもいられず、僕は広場の方へ向かって駆けた。後ろで女子が何か言ってたけど、風の中に流れて聞こえなかった。  広場では2年生のほぼ全員が遊んでいる。一人ずつ友達をツテに探すのは面倒なので、2組の先生に近づいた。 「すみません、僕、3組の島本ですけど、『玉井君』ってどの人ですか?」  人見知りな僕からしてみれば、これだけで随分な挑発的行為。でも今は怒りのパワーに任せてなんでもできそうだった。 「どうした?」  先生は僕の様子が普通と違うことを察したらしく、怪訝な表情で立ち上がり、僕に向き合った。 「『玉井君』って人が、僕のものを盗ったんです!」  僕の大声に、周囲で遊んでいた数人も手を止めてこっちを見た。
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