ビー玉泥棒

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「ごめんな」  玉井は謝ってくれた。周りのみんなの前で。僕は右手に瓶、左手にビー玉を握ったまま、力が抜けてくず折れそうだった。 「玉井、泥棒!」 「ビー玉泥棒!」 「コラ!」  周りの男子が笑いながら騒ぎ立てた。先生に怒られ、追いかけられながら散っていく。 「もう、いいかいな」 「あ、うん」  玉井は腑抜けた僕の返事を聞くと、こちらに背を向けて友達のところに走っていった。  感情に振り回されて呆然とした僕だったけれど、ふと、みきちゃんのことを思い出した。  のろのろとその場を離れ、3組の人たちが集まっている辺りに向かった。 「もういいよ。島本君の唾が付いたビー玉とか、いらん」  どんなに可愛くても、意地悪な女の子だったら二度と好きにならない。  その子の取り巻きも。  弱冠小学2年生ながらに誓った。
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