ビー玉泥棒

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***  玉井におごってもらったラムネを飲み干した。あの時と違って、冷えて美味しかった。 「『ビー玉』ってあだ名が付いてからは、クラスのやつが結構いろんなのくれるようになって良かったよ」 「前向きやね」 「島本には悪かったけど。それに......」  玉井は残ったラムネを一気飲みした後、プハッと息を吐いた。 「心の中では傷になっとった」  苦笑いしてこっちを見る。不思議に思って見つめ返すと、玉井は目を逸らしてまた水面に顔を向けた。泣き黒子が角度で光って涙に見えた。 「俺、泥棒したんやって」  蝉の声はもう聞こえなくなっていた。下校中の中学生が友達とはしゃぐ声や、犬が遠くで吠える声を耳の先で掠める程度。  だから余計にそのひと言が耳に響いた。 「謝ってくれたやん」  ビー玉を睨んで、僕は言った。この怒りの気持ちはどこに向けられたものなのか、自分でもわからなかった。 「みんなの前で、認めたやん。勇気あるやん。すごいやん」  横からの視線を感じるけど、僕はビー玉を睨み続けた。
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