ビー玉泥棒

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「何、怒ってるん」  玉井が笑った。眉毛がハの字に下がっていて、なんとなく笑った藤さんを思い出した。  笑顔にホッとして、僕は緩んだ口元に力を入れて引き締めた。 「島本に会えて良かったわ」  玉井は立ち上がって、草の葉をズボンから払い落とした。僕もつられたように立ち上がり、ラムネの口を捻った。 「これ、弟にやって」 「おお、ありがと」  玉井は僕が差し出したビー玉をハンカチで受け取った。あの時、丁寧に、大切に、ティッシュに包まれていたのを重い出す。 「俺のは島本にやるわ。もらってくれん?」  そう言って玉井も自分のラムネ瓶からビー玉を取った。 「もらってやるか」  僕はそれを、ビー玉を失った自分の手持ちの瓶に入れた。
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