ビー玉泥棒

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「うちらが小学校2年生の時、遠足でラムネ持ってきてた子がいて、それ思い出した」 「......へー」  まさに昨日玉井と話したことを言い当てられた。咄嗟に相槌を打ったけど、どう続けていいか分からなかった。藤さんが同じクラスになったことはない。  僕が絡まった記憶の糸の先をなんとか辿ろうとしていると、藤さんは向かいに座ってカバンから過去問集を出しながら言った。 「私がたまたま、近くでお弁当食べよったら、同じクラスの男子がその子のラムネのビー玉取って行って」  心臓の音が藤さんに聞こえてしまう。 「その子が戻ってきた時に血相変えてね。なんか、ラムネっていうよりビー玉が大事やったみたい」  淡々と話して、藤さんはノートを開いて勉強に取り掛かった。僕も同じくノートを開きながら、ぽつりと言った。 「......ラムネとか持ってきて、馬鹿やね」 「うん。炭酸やし。開けた瞬間、噴いとったよ。ブシャーって」  藤さんは少し笑った。
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