10人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「ビー......同じクラスの男子ってどんな子やったん?」
何気なく聞いた風を装って尋ねた。考えてみたら、僕は玉井のことはよく知らない。藤さんはお腹の底から溜め息を吐いた。
「頭良くて、運動もできて、真面目で、クラス委員だった」
並べられた賛辞には、なんの色もついていなかった。
「......仲悪かったん」
「良かったよ」
僕の質問は、藤さんの答えに真っ二つに斬られてしまった。静かになった教室に、遠くの教室から木管の音階が届いた。
しばらくの沈黙の後、ようやく藤さんは口を開いた。
「その子が盗んだって、私がチクった。友達やったけど、悪いことしたらいかんけん」
「藤さんらしいやん」
「けど、それが原因で、その子虐められるようになって、結局転校した」
藤さんは俯いて唇を噛んだ。眼鏡に夕陽が反射して、その奥の目の表情は見えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!