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「......謝れんかった。自分がチクったことも怖くて言えんかった」
藤さんの声は震えていた。
「言う必要は、なかったと思う」
慰めとかそんなんじゃなくて。僕は思ったことを素直に口にした。玉井が「ビー玉をクラスメイトがくれるようになった」と言ったのはいじめの一環だったのかもしれない。けど、その口調に何か含みはなかった。
「本当のこと言ってくれたけん、盗まれた人も助かったやろうし。女の子は可愛いだけじゃダメとよね」
なんだかおかしくなって笑ってしまった。「何の話?」と藤さんは困惑していた。
「藤さんは、昔から藤さんなんやね」
あの眼鏡の子。ラムネを持ってきた僕のことを馬鹿だと言い放った。震えを抑えながらも、正しい行動を選んだ。
昔から変わっていない藤さんの頭を撫でてやりたくなった。
「変な島本君。人が過去の後悔を初めて思い切って言ったとに」
藤さんは機嫌を損ねて口を尖らせた。
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