ビー玉泥棒

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 河川敷には、数人が常に行き交っていて、思い思いのペースで歩いたり走ったりしていた。  散歩で出会った犬どうしが互いを警戒している様子を見ながら、玉井は口を開いた。 「二つ下に、発達障害の弟がおってな。その時......まあ、今もやけど、ガラス玉が好きやったんよ。そんで、ビー玉とか見つけたら持って帰ってやってた」  そう言った玉井は、あの時と同じ、まっすぐな眼差しだった。  僕らが小学校2年生の時。秋の遠足で、僕はおやつにラムネを持っていった。お母さんが「(ぬる)くなるよ」とか「炭酸が噴き出すよ」とか忠告してくれたけど、僕は頑なにおやつを変えなかった。  クラスメイトのみきちゃんに、ビー玉をあげる約束をしていたんだ。  そういえば、みきちゃんも勉強のできる子だった。なんでも知ってそうなのに「ラムネのビー玉の取り出し方」を知らないって言うから、僕は得意げになってしまったんだ。
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