ビー玉泥棒

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***  その日は遠足日和だった。お母さんの預言通り、リュックの中で温くなり、延々と揺さぶられたラムネは、玉押しを押し込んだ瞬間、中の液体が盛大にほとんど全部噴き出した。 「島本、ラムネとか持って来とーと!?」 「ばりうけ! 噴き出しとるやん!」  今だったら僕も友達と大爆笑できるのに、その頃は恥ずかしくて、ラムネを飲み干し「手、洗ってくる」とその場を逃げ出した。  でも、これで任務は半分終わったようなものだ。手洗い場があるトイレは遠く、戻って来た頃には一緒にお弁当を広げた友達は遊びに行っていた。  でもかえって好都合だ。誰にも見つからずにみきちゃんのところに持っていける。  胸のドキドキは、走ってきたからだと言い聞かせ、僕はラムネ瓶を掲げた。 「えっ......!?」  太陽の光に輝く、薄い水色の瓶。その中ほどに入っているはずのものがーー   「ない!」  ビー玉がなくなっていた。
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