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僕の返事を聞いた途端、みきちゃんは「はあ?」と低い声で聞き返してきた。
クラスの女子を牛耳る彼女の真の姿が垣間見えた。
「くれるって言ったやん! ノブちゃんたちにも、島本君がビー玉くれるって言ったとよ!」
「そんなん、なんで言うとよ。それに、僕だってあげるつもりやったのに、なくなったんやもん」
「島本君の嘘つき! 一緒に来て謝ってよ!」
みきちゃんはクラスで一番可愛くて、みんな彼女の言う通りにしていた。ここで《貢ぎ物》を見せびらかすことができなければ、面子が丸潰れになるのだろう。鬼の形相で僕の腕を掴み、方向転換した。
僕は込み上げてきた熱いものをグッと飲み込んで、女子たちの前で頭を下げるハメになった。その時ーー
「2組の玉井君が取りよったよ」
僕の後ろから、知らない声が聞こえた。僕はバネが跳ねるかのように体を起こした。
眼鏡の奥の表情は見えなかった。でもその子の声は震えていた。みきちゃんの僕の吉川さんが腕を組んで尋ねた。
「なんで知っとーとよ」
「見たけん。ラムネとか、持ってきてバカやないと?って思って見とったけん」
その女子は少し離れた所で、一人でご飯を食べていたそうだ。
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