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馬場園の館に着くと鬼の間で熱そうな緑茶を飲んでいた馬場園さんがいた。
人間の姿に変化した真白が私を連れてきた経緯を話すと、馬場園さんはニタリと笑う。
この顔はきっと『おもろい事起こりそうやでぇひゃっはー!』という顔だと思う。
「そういうわけやから、酒吞童子様が来られたら鬼門を通した言うてくれ」
「わかりました」
真白に柔和な笑みで頷いた馬場園さんは私へ顔を向けると「ほな、伊吹さんは今こちらに向かってはるんですね?」と訊いてきた。
その問いに今頃ハッと青ざめる。
「え…?く、来るよね?真白…、部長来るよね?」
そういえばさっきは何があっても絶対行かないぞという強い意志を示していた気がする。
部長…、来ないのでは…?
「来るやろ」
真白は不安を感じさせない声で言った。
「く、くると思う?」
「来るって。だって大事な嫁の危機やで?」
いや、私は嫁じゃなくてただの部下なんだよ、と暴露した方がいいような気がして口を開いたが。
「伊吹さんなら必ず来るでしょう。自分のせいで誰かが攫われて放っておくような薄情な人やないですよ」
馬場園さんが断言した。
それには同感ができた。部長は鬼に捕まった私を自分の身を挺して守ってくれた人だし、人の本質を見極めることに長けている馬場園さんが言うのであれば納得もできる。
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