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人はいつか死ぬ。死にたくないと思っている人。今の生活に嫌気が差している人。いずれにせよ遅かれ早かれ人間は死ぬ。
ただ僕は早く死ぬ方だっただけだ。
そんなことを考えていたからだろうか。
死んでしまったかもしれない事には驚いていないのに、宙に浮いている状況には激しく動揺した。
ことの発端は遡ること十数時間前
疲れたな……。
今日、仲の良かった友人がモンスターとの戦闘中に亡くなったとの知らせをギルドの受付嬢から聞いた。
今年何回聞いたかわからない嬉しくない情報にこの仕事を心底辞めたくなる。
薄暗い帰り道に、ほんの少し顔を出す月明かりを頼りに宿を目指す。
最近お世話になっているボロ宿に着くと、ベットに潜り込み今日の出来事が悪い夢であってほしいと思いながら眠った。
数時間後
ドッン
とてつもない大きな音に目が覚めた。
当然だ。目を開けるとそこには屋根に食い込んだ隕石があるのだから。
しばらく思考停止していた。周りからミシミシと音が鳴り、逃げなければと慌てたがすでに手遅れだった。
そして、次に気が付いた時には宙に浮いている今現在の状況だ。
先ほどは言い忘れていたが浮いている今、目の前には超絶ドタイプの女の子がいる。
彼女は、華奢で整った顔立ちしており、風でなびくサラサラしている髪に空のように青い瞳。
見ているだけで数時間は立ってしまったのではと思うほどくぎ付けになってしまった。
あまりにも長い間くぎ付けになってしまっていたからか、恥ずかしがりながら話し始める女の子。
「あんまり見られると恥ずかしいんだけど」
照れている彼女からその言葉を言われた。
確かに自分がそんなに長時間見られたらいやだよなと思う。
「ご、ごめんなさい。あまりに綺麗だったのでつい」
彼女の頬が更に染まる。
とりあえず、自己紹介でもしようとした時、先に言われた。
「私は精霊のメア、よろしくね」
先に言われたことに子供の様にいじけそうになった。挨拶は自分から、死んだじっちゃんがいっていたことだ。それはともかく自己紹介を続けた。
「僕はレクス、よろしくメアさん」
自己紹介が終わり、いまさらながら疑問に思ったこと聞いてみる。
「どうしてこんな状況に?」
今更とでも言いたげな顔だったが渋々説明をしてくれた。
「あなたは手違いで死んでしまったの」
手違い?どうゆうことなんだ。
「あの隕石は何だったんですか?」
「あ~あれね。ジャガイモよ」
ジャガイモ?どうゆうことなんだ。
「それってある国からほとんど、全世界に輸入で賄われているという」
「そ~それそれ」
メアから正解と言われて国から狙われることなんかしたかなと頭なのかで考える。
それに隕石だと思っていたものはジャガイモだと言われた。
恥ずかしくて死にそうになった。
まあ、もう死んでるけど。
冗談はさておき、ジャガイモの精霊さんに質問してみる。
「もしかしてジャガイモ国から恨みを買ったとかってことですか?」
「違う違う、あれは偶然だから」
「じゃあジャガイモの精霊さんがやったんですか?」
「ジャガイモの精霊なんているわけがないじゃない」
頬を膨らませて怒りつつも、再度話し出す。
「一つの提案として生き返る方法があるんだけど、どうする?」
少し悩みも無く生き返ることを決意した。
「お願いします。因みにどうやって蘇生させるんですか?」
気になって聞いてしまったが無言の時が来る。昼から夕方までの時間が過ぎたのではないかと錯覚してしまうほどの気まずさ。
実際の所は少しの無言。無言のちに耳元でささやかれた。
「キ、キス」
「えっ!」
固まってしまう。あまりの驚きに声がかかるまで田んぼの案山子の様に一歩も動ごけず何も音が聞こえなかった。
「聞いてる? 時間がないから早くしてね」
笑顔なのに目が笑っていない顔でせかされる。
「なんで……ですか?」
気になって素直に聞くと答えが返ってくる。
「話聞いてなかったの? あんまり時間が経つと斑点模様が出て復活できる確率が減るの」
メアは、説明をしている時にはすでに覚悟の決まった顔をしていた。
正直に言えば僕自身はまだ覚悟が決まったわけではないが、確率が減るのは嫌だと思い頭を下げた。
「お願いします」
顔を上げてすぐ、短い間だったがキスをした。唇の柔らかい感触が今でも残っている気がする。
次に気が付いた時には、ものすっごくデカいジャガイモの横に眠っていた。
精霊の姿は見えないが、先程まで居たであろう場所に感謝の意を込め礼をする。
礼をやめると、精霊が「これはジャガイモ」と言っていたので、何日分の食事になるのだろうと心を躍らせながら採取していた。
トントンと肩をたたかれる。
誰もいないはずと思いながらも恐る恐る後ろを振り向くとさっきまで話していた。
精霊のメアが居た。
「じゃあ、さっそく交換条件のお願いを聞いてもらえる?」
「なんのことですか?」
何を言っているのか分からなかったから反射的に聞いてしまった。
話を聞くに案山子の様になっていた時に話をしていたらしい。
「因みにお願いって何ですか?」
少しの躊躇う様子を見せ、意を決して口を開いた。
「悪魔を倒してほしいの」
「へっ」
倒さないといけない相手が、千年前にこの世界を破滅に追いやったといわれる悪魔だったことに驚きを隠せなかった。
呆然と立ち尽くしていると声がかかる。
「とりあえず、今のままでは悪魔を倒せないから場所移動するね」
「ちょっ」
声をかけたときには足元に転移の魔法陣が展開されていて逃げるに逃げれない状態だった。
それにだんだんと意識が遠のいていく。
これは無理だな、と半ば諦めたときには意識は完全になくなっていた。
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