第1章 千鶴  1

5/5
前へ
/209ページ
次へ
 しかし、全体的に垢抜けていない感じがするのは否めない。化粧も下手だ。仕事終わりというのもあってか、マスカラやアイラインが崩れて、目がパンダみたいになっていた。   二十歳そこそこか、仙台からさらに北の田舎から出てきたばかりなのが一目でわかった。ただし、胸もしっかりあるし、スタイルもいい。ここの水に慣れれば、まあまあ指名が入るキャバ嬢ぐらいにはなれるだろう。  国分町で生まれて、十代半ばにはいくつかの店に出入りしていた俺は、最初は垢抜けなかった女の子たちが、まるでさなぎが蝶に変わるように美しく変貌していく姿を何人も見てきた。  磨かれて、しっかり稼いで夢をかなえる子、堅気の男に見染められ結婚して街を出ていく子がいる一方で、男を見る目がなくて貢いでは捨てられるというのを繰り返す子や、ホストに狂ってどんどん堕ちていき、風俗で働いて有り金全部ホストに貢ぐ子もいた。  さて、この子はどっちの道を歩くことになるのだろうか……。  それからしばらく、俺はバイトのシフトが変わり、女のこともホームレスのこともすっかり忘れてしまっていた。  
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加