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知り合いの店から、単発で雑用を頼まれることもあった。キャバ嬢の引き抜きトラブルの解決とか、金払いの悪い客に穏便に出禁を言い渡す役、ストーカーされている女の子の送迎なんてのもあった。
ほかに行く所もないし、俺はこのまま国分町で死ぬまで生きていくんだろうなと漠然と思っていた。
久しぶりに『ピンキーキャット』の店内に入ると、カウンターに並ぶ女の子に知った顔は半分もなかった。
ガールズバーで水商売に入った女の子の多くが、慣れた頃にはもっと金を稼げるキャバクラに移ってしまうとマスターが嘆いていたっけ。
カウンターに並ぶ女の子には皆客が付いていたので声はかけず、誰か出てくるのを待つことにした。
しばらくすると、奥から洗い終えたグラスをトレーに載せて、一人の女が出てきた。
それが驚いたことに、あの握り飯女だった。
女の方も一瞬俺を見て、目を輝かせた。しかし、女のあとから出てきたマスターが、「おお、ナオキ、さっそく来たか」と俺に声をかけ、客じゃないとわかった途端に興味を失ったようだった。
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