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第一話テレビ女(前編)
「実は、うちの両親が死んだんです」
少女は重苦しく口に出す。餓狼と狐々丸と冬季は険しい表情をするだけで、黙って聞いていた。
少女の肩が震えていた。餓狼はポケットからタバコを取り出して、カウンターの椅子を指差していった。
「コーヒー出すから、座れ」
少女は顔を上げて、慌てて財布を取り出そうとしたが、狐々丸が手を出してウインクしてから言う。
「お金はいらないよ、さあ座って」
「は、はい」
少女は椅子に座った。餓狼がカウンター奥に入っていき、コーヒーを沸かしていた。その間、灯狸がキッチンの皿とかコップを洗っていた。
「で、続き話していいよ」
「はい」
少女が続きを言おうとしたら、お腹の音が鳴った。冬季が狐々丸の方を見た。狐々丸は苦笑いをして、餓狼の隣に立って料理をし始める。少女はいつ言えばいいのか困惑していると、灯狸がじっと見つめていった。
「俺に言えばいい、後であの二人に伝えておくから」
「はい」
少女は大きく息を吸って吐いた。震える手を握りしめて、自分自身を落ち着かせる。大丈夫と言い聞かせ、少女は灯狸にいった。
「テレビを見ていたら、いきなり、おかしくなったんです。私は、扉の隙間でしか見てなかったので、テレビの内容は見ていなかったんですが、それでも両親の異常はわかりました。なぜかここにいてはいけない気がして、コンビニに行って、警察呼んだら、両親が包丁で」
少女は泣き出した。
餓狼がソーサーにコーヒーカップを持ってやってきた。狐々丸は、皿の上に可愛らしいクマの形のサンドイッチを差し出した。少女は嬉しそうな顔をして、受け取ってコーヒーを飲んだ。
甘くもほろ苦い味が口の中に広がった。その味を味わって、「美味しい」と呟く、涙が込み上げてきて、ボロボロと涙を流しながら、サンドイッチや、コーヒーを交互に食べて飲んでを繰り返していた。
食事を終えると、少女はしゃくり声をあげながら、「もう、どうしたらいいのかわからない」といった。
「おい、狐々丸、お前の携帯いじれ」
「ういっす」
「何がわかるんですか?」
灯狸が二人に聞いた。餓狼は意地悪そうな笑顔を浮かべて狐々丸の肩を組んでいった。
「こいつは、ネットの情報網を網羅している。だから、こいつにこの事件の内容を知っているやつがいたら、この店に招き入れるって作戦だ」
「でも、時間かかるので、お嬢ちゃんは一度家に帰った方がいいよ」
少女ははっと我に返って、警察に黙ってどっか行ってしまったことを思い出して気まずい顔をした。
「そういや、名前は?」
冬季が聞くと、少女は答える。
「佐藤皐月です」
「皐月、なんかあったら、またここに来るといい。今は、世間に紛れ込んでおいた方がいい。そのほうが、誘拐事件とかなんだとか言われねぇから」
餓狼がそういうと、皐月は頷いて、頭を深々と下げて「ありがとうございます」と言って出ていった。
「いいんすか、二人とも」
「何がだ」
「何が?」
餓狼と狐々丸が同時に聞いた。灯狸は言いづらそうな顔をしていった。
「彼女から、霊との縁が見えましたが」
餓狼はタバコを消して、狐々丸はうししと笑いながら、アイホンを口元に当てながらいう。
「釣り糸はないといけないんだよ。それに、あの縁は……」
「『無意識に作った縁』じゃねーからな」餓狼が歯を見せて笑った。
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