第四話 探して(前編)

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第四話 探して(前編)

 大雨が降り続ける中、狐狗狸の喫茶店にベルの音が聞こえた。  狐々丸と灯狸はそっちへ目を向けるが、餓狼は欠伸をしながら、そちらを見なかった。  扉の前には髪の毛を前に垂らし、不気味な女性が立っていた。普通の人だったら幽霊と勘違いをしてしまうだろう。だが、狐々丸はカウンターの奥に入って行き、すぐさまタオルを取り出して、女性に持っていった。 「大丈夫っすか?」 「ありがとう」  細々とした声が聞こえてきて、灯狸はカウンターに促して座らせた。  女性は泣いているようだった。  餓狼はカウンターから身を乗り出すようにして聞いた。 「何を考えている?」  女性は啜り泣く声を出しながら言った。 「私が人間じゃないって知ってるでしょ?」  そう聞かれ、狐々丸達は頷き合い「知ってるよ」と答えた。女性はグスグスと泣いているようだった。餓狼はイライラとしているようだったが、灯狸が「まあまあ」と宥めている。 「で? 依頼は」 「私の、『私の体を探して』」 「わかった、名前は?」  女性はスッと消えてしまい、餓狼は舌打ちをした。灯狸は不思議そうに聞いた。 「なんで舌打ちをするんですか?」 「こういう関係の霊は『縁』を繋げておいた方が、こっちのためになる」 「どういうことですか」  灯狸がわかっていないようで聞いてみると、狐々丸がうししと笑いながら、補足説明をし始めた。 「幽霊と縁が繋がると、困ったときに助けてもらえるんだよ。その為に名前を聞くって感じ、まあ近いのは陰陽師だけど。陰陽師は、呼び出して戦って使役するって感じだから違うけど」  そう説明されて、灯狸は困ったように眉を下げていた。餓狼は飲み物を飲みながら、のんびりとしていた。 「あの女の生息地がわからない」 「臭い的に、井戸って感じが強いよ」  狐々丸がそういうと餓狼と灯狸はうんうんと頷きながら「確かに」と答えた。 「井戸がある家を探すぞ。狐々丸、探せ」 「りょーかい!」 「灯狸は、俺と一緒に探すぞ」  灯狸はまだ考えているようで、首を傾げながら聞いた。 「どうやって探すんですか」 「女のところに行く」 「女のところ!?」  そう聞き返すが、餓狼は答えるつもりはないらしく、グラスを置いてから出ていった。灯狸も続けて追いかけた。  大雨の中、傘が咲き乱れている。そして、餓狼と灯狸は傘をささずに歩いていてる。  赤信号で待っていると、女子高生の声が聞こえてきた。 「最近の事件物騒だよね」 「知ってる知ってる。井戸の死体事件でしょ?」 「うんそれ」  灯狸がそっちへ目を向けようとすると、青信号になった。女子高生達は消え去っていった。 「もしかして、あの女性は殺人事件の被害者なんですか?」 「だろうな」 「なんで、殺したんでしょうか」  悲しげに灯狸が言うと、餓狼が当然の如く答えた。 「殺人鬼の美意識だろうな」 「美意識?」 「美徳って言うやつだ。芸術とかそんなことを言う奴らがこの世には大勢いる」 「悲しいことをしたり、酷いことをする意味がわかりません」  餓狼が振り返って言った。 「それが人間っていう生き物だからに決まってんだろ。酷いことするのも、悲しいことをするのも、どの生きている生物よりも、人間の方が恐ろしいのは当たり前なのだから」  灯狸は無言になってしまい、それを見ると餓狼は舌打ちをして歩き出した。灯狸はトボトボとついて歩いていく。  とある一軒家に辿り着く、餓狼は扉を開ける。 「お帰りなさい」  そういって出迎える女性がいた。家の中はとてもひんやりとしていた。そこには白い髪に、白い肌、着物を着ていた。 「ユキメ久しいな」 「ええ、そうね」 「ユキメさん?」  灯狸が二人に聞くと、ユキメは頭を深々と下げた。 「冬野ユキメって言います、雪女です」 「なんで」 「ユキメ、最近の情報知っているか」  ユキメが二人を案内するように背を向けて、二階へ向かっていった。餓狼と灯狸は靴を脱いで追いかけた。  ユキメが扉を開けて、二人を中にいれる。  中には大量の資料があった。 「ここにたくさんの資料があるわ、好きなように使ってください」 「ああ」  ユキメはそう言って、扉を閉めて一階へと降りていった。灯狸は辺りを見渡しているようだった。 「灯狸、お前はそっちだ。俺は、こっちを見る」 「わかりました」  灯狸と餓狼は情報を集め出した。
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