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第五話 探して(中編)
灯狸は見つけた。
1950年に、井戸のある殺人事件があったということがわかった。
場所は、神奈川県のT町というところだった。
「餓狼さん、ここじゃないですか」
餓狼が、灯狸の指差している場所を見る。そこを見て、餓狼が頷いて、立ち上がった。
「行くぞ、そこの可能性が一番高い」
「はい、ですが。どうやって」
餓狼は答えず、ドアを開けて一階へ降りて行き黙って出ていった。彼女に何も言わず出ていくので、灯狸が「いいんですか」と聞くが、黙って歩いて行く餓狼。あまり深入りしない方がいいと判断したのか、灯狸はついていく。
「地下鉄に行く」
「はい」
話を聞いていないというより、真剣に捜査をしているようだった。
地下鉄に行き、電車に乗る。すると、餓狼は眉間に皺を寄せた。
「なんか臭いがする」
「なんのですか?」
「火の臭いだ」
火が燃え盛るような勢いで、ガラスを突き破った。男が真っ黒になって出てきた。電車に乗っていた人達は叫び声を上げながら、逃げ惑う。
「どうします!」
「逃げ遅れのない奴らを探して、外へ出るぞ!」
餓狼はそう言って、後ろの方に行き、灯狸が状況を説明した。
「今、前の電車で火が」
それだけ聞くと、人々は逃げ惑い、窓から逃げようとしていた。
「一人ずつ!」
そう言って落ち着かせようとする灯狸だったが、全員パニックになっており、冷静になれなかった。
「まずかったな、火が出ていると言ったのは」
「俺たちも逃げましょう」
「いや、待て」
「え?」
なんで待てと言われたのかわからなかった。餓狼は、遠くを見つめて誰もいなくなったのを確認した。
「解」
そう言って、姿を狼に変えて唸り声をあげていた。灯狸はなんで姿を解いたのかわからなかった。
「何を」
向こうから、真っ黒い男が歩きこっちに近寄ってきた。灯狸は狸になって威嚇をするが男はそれでも歩いて来る。
「お前、なんでこんなことを」
『ア、のいと、を』
そう言っていた。電車はどんどん加速する一方だった。
「あのいと?」
灯狸が聞き返すと、男は掠れた声で。
『あ、の、い、と、たす、け』
そういっている間に、真っ黒い男は後ろから蹴り飛ばされた。
「!」
餓狼と灯狸が驚いていると、センスを持ったメガネをかけた男が言った。
「約束を守らん幽霊には罰をや」
指を鳴らすと、真っ黒い男は悲鳴を上げながら、消え去った。なにをしたのかわからずに、男を睨みつけていると、男はニコニコと笑いながらいう。
「お前ら妖怪なん? 臭うで? 妖怪くささが」
センスを閉じた。
餓狼が牙を剥き出しにして睨みつけていると、男は言った。
「俺は妖怪退治屋の安室広一や、よろしゅう頼むで?」
にっこりと笑っていう広一は、人間の中で一番不気味だと、二人は感じた。
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