2 🔒🍌☕️

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しばらくぼーっと空を見上げていると、ふとドアのノック音が響く。 その主はこの家の住人である一人しかいない。 私は枕元にある時計を片手に取ると、『入るよ』と一声かけて扉を開けてきたその男に照準を定める。 渾身の力を込めて、その顔面目掛けて投げ付けた時計はすんなりとキャッチされ、時計に気を取られている隙に男の頭から被せようと広げた布団は──気付けばふわりと私を包んでいて、足が地面から離れていた。 狩取りに行ったはずが、確保、されていた。なぜ。 その数秒を思い返し、はっと現状を確認する。 布団に包まれた私は彼の片腕に支えられ肩に担がれているようで、床が遠い。 そのまま部屋の中へと歩みを進める振動が伝わり、時計を元あった場所に置いたのか、コトッという音が耳に届く。 直後、ゆっくりと体を起こされ、床に落とされる……かと思いきや、背中に感じるふんわりとしたスプリングの効いたベッドの感触。 ギシリという音がやけに響いた。 顔だけ包まれた布団から出ていて、肩から下は布団に包まれていて動けないまぬけな私と、男の視線が交差する。 「残念でした」 そう言ってまた、男はふわりとした笑みを向ける。 デジャヴだ。 もうそのセリフは聞き飽きた。 しかも今回、私の両手両足の自由は布団によって奪われている。 自分の仕掛けた物がなぜか自分に返されている。 これは……あれだ……『ミイラ取りがミイラになる』ってやつだ……。 なんて呆然と思考を巡らせている間に、奴はまた私の首元に顔を埋めて来るので、首しか動かないなりに全力で暴れた。 「なんでそんなにかわいいの?」 「可愛いとか意味わからないキモい!!キモいキモいキモいいい!!」 「ははっ、悪口のレパートリーが少ないそんな所も好きだよ」 ビクりと一瞬、その言葉に気を取られる。 そんな一瞬囚われた言葉を振り払うように、首をめいいっぱい横に振って、彼を拒絶する。 「照れた?」 「照れてない!!」 「今、反応したでしょ」 「してない!!」 「でも、どの言葉に対して言ってるのかわかってるってことは、自覚あるよね?」 首を振るのをピタリと止めた私は、もしかして墓穴を掘ったのかもしれないと、今の会話を頭の中で思い返す。 男が言う『反応』した所を、本当に私が解っていないのであれば、『知らない』『なにが』『なんのこと?』が正解だったのではないか? それに気が付き、悔しさで男を睨むけれど、この男は本当に甘ったるい笑みを私に向けてくるので、力が抜けていってしまう。
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