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少しの間そう撫でられていて、『違う、そうじゃない』と思い、自分がここに来た目的を思い出してはっとする。 急に男を見上げた私に少し驚いた様子だけど、すぐに話を聞く姿勢を見せる彼に、私は口を開く。 「本が読みたい」 「……わかった、用意しておくよ」 そう返されて頭を撫でられ扉に手をかける男に、会話が終了されたかのように感じる、が、まって、そうじゃない。 だって、そうじゃなくない? 聞くことまだあるでしょう? 「……まだどの本が欲しいのか言ってない」 なんの本が欲しいのか言う前に部屋の中に戻ろうとしたぞこの男。 それとも私の頭の中のことなんて、この男は何も言わなくてもわかってるとでも言うのだろうか? それはそれで寒気がする。 ──しかし、その謎は後日渡された箱の中身によって解消された。 その日、外から帰ってきた男がそのまま私の部屋の前で足音を止め、ノックして入ってきた。 ゴロゴロと薄い布団に絡まりついて気を抜いていた私は、すぐに起き上がれず、もたついた動作で布団を剥がしてから、彼を睨みつけようとした。 しかし、その手には赤い紙にプレゼント包装された長方形の物が、こちらに向けられていた。 「なにこれ?」 「本だよ」 その男の言葉に、私はまた困惑する。 なんてったってこの前の話の時「大丈夫大丈夫」とか言って本のジャンルすら聞かないまま部屋に戻って行ったのだ、この男。 この本がなんの本なのか、予測も立てられない。 それもわからないけれど、なぜ本一冊にプレゼント包装されているのかもわからない。 「包む理由なくない?」 「プレゼントしたかったんだよ」 そう言ってまた、男はふわりと笑う。 それはそれは満足そうに……まって満足感に浸るにはまだ早くない? そういうのってプレゼント受け取ったり開けた時の反応見てからするもんじゃない??? そう怪訝な顔で男を見るも、その表情は変わらずニコニコしている。 恐る恐る、その本を手に取ると、なんだか変な感じがした。 本……?かと思っていたそれは大きさから推測していた重さより軽く感じる。 本より軽い本……? その違和感を拭いたくてその場で包装紙をビリビリと破いていくと、くすくすと笑う声と共に「大胆だなぁ」なんて言葉が聞こえるけれど、そんなこと気にしていられない。 開いて出てきたのは箱だった。 どう見ても冊子ではない。 表側にタブレット端末のようなイメージがプリントされている……。 これは、本? 「これ、本じゃない」 「本だよ、検索機能の付いてる本」 「……まさか」 それは、いわゆる『電子書籍』を指しているようだった。
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