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電子書籍と言われる物の存在は知っている、でもそれ専用の端末というものを、私は初めて見る。 スマホとかタブレット端末で読むような印象を持っていた私に、その箱に書いてあるイメージ画像は馴染みがない。 ……まって、確か私の予測が正しければ、こういうのって値段高いんじゃないか? まさか端末で買ってくるとは思っていなかった私は、呆然とその箱を眺める。 「開かないの?」 にっこにっこ嬉しそうに笑う男の声が降ってくる。 けれど現状を受け入れるのに時間のかかっている私は、これを自分のものだとまだ実感出来ていないし、予測不能な男の行動についてどうにかならないのかと頭を抱える。 「これ……」 「もしかして電子機器いじったこと無かった?使い方わからない?」 「いや、わかるけど、わかるけど……おいくら万円?」 はうまっち? その疑問に男はパァっと瞳を輝かせて答える。 「5万は越えてないよ」 私は頭を近くの壁に叩きつけた。 一人暮らしの家賃払える額じゃねぇか!! 誰が本を買って欲しいと言っただけでこんな輝きに満ちた笑顔で5万近い本を……というか端末を買ってくるのか。 そもそもこういうのって大体月額分かかるかまた別で本の値段がかかるか……なにかしらの出費は必然的、それを考えると……。 「ばか、なの……?」 私は思考を放棄してその一言を絞り出した。 頭をぶつけた私に寄り添って患部を撫でている男は「ん?」なんて、何も分かっていないような笑みを向けていて。 頭がいい人だと思ってた。 接してる限り、駆け引きがうまかったり、常に先のことを見据えているような……そんな人だと思ってた。 こんなに、ばかだとは思わなかった。 殺しに来てる相手に普通プレゼントしないどころか、うん万単位の……しかもご丁寧に包装紙にまで包まれて。 普通じゃない……いや、普通じゃない人なんだろうなとは思ってたけど常識が通じないというか……。 「アンタ……」 「ん?」 「貢ぎ癖でも持ってんの……?」 一周回って、実は可哀想な人なんじゃないかと思い始めていた。 だからといって私に貢ぐ意味はわからないけれど、もしかしたら誰彼構わずお人好しなんじゃないかとか、実は騙されやすい人で、単純な人、いや寂しがり屋な人? ぐるぐるとそんな妄想が湧いて離れてくれない。 いや、例えそれでも私は絶対情なんて持たないけど。 「貢ぎ癖?」 ぽかんとした表情でそこに立つ男には、言われていることがわかっていないように見える。 自覚がないのか……? 「いや、人に貢ぐ癖は持ってないよ?」 嘘、絶対嘘、嘘だぁ、え?これで貢いでるつもりがないってどういうこと……? 考え直して、この生活費まで諸々払ってるのは誰?
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