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私はそのプレゼントを持ったままソファーに向かい、座った。 私の部屋に居座らせることになるけれど、ここは仕方ないと男にも座らせ、話し合いを始める。 「アンタ人の世話するのが好きなの?」 「いや、どちらかというと嫌う方かな」 「それならアンタが家に置いて知らない女の人も寄越して医者呼んで薬代まで払ってる、目の前に居る女はなんなの?」 「世話ってほどのことしてないよ、全然食べてくれていないし」 「金払ってる以上のことまでして世話してないってどんな価値観してんの?」 確かに、私も世話になっている体でここにいる訳じゃない。 殺すために男の話に乗った、そこは断じて揺るがない。 しかしそれでも外に出られない以上、世話にならずに居られるはずもなくて、食事代がそれほどかからなくても生活する上で水道光熱費だってかかっていることは当然私の頭でもわかる。 そこまで人間を捨てたつもりはない、一人暮らし……だって、していた。 今は帰っていないあのアパートで、毎日ギリギリの生活をしていた。 ……そういえばあのアパートどうなったんだろうか、解約されてしまっただろうか……。 そしたら私にもう帰る家は……。 いや、今はとりあえずそれは置いておいて。 「私はこれを受け取れない」 そう一言口に出すと、男は首を傾げて眉を潜める。 普段はふわふわとした笑みばかり浮かべている彼からはあまり見たことの無い表情だった。 「なんで?」 「高すぎる、すぐに返せない額だから」 「返さなくていいよ、プレゼントなんだから」 「高すぎんだっつってんでしょ、私は別に何万円分も本が読みたいわけじゃないから釣り合わない、元取れない」 それが例え、すぐに殺す予定の相手だとしても、それとこれとは別問題だと、私の中のまともな私が主張する。 これでも人間社会の一員だ、他人に無償でそんな世話にまでなれない。 私が返せるものなんてむしろ殺意しかないんだから、それじゃ明らかに釣り合わない。 「それは」 しばらく無言で考えていた男が、不意に私の首元に手を当てる。 警戒する私に、彼は聞いてくる。 「それはすぐに払えるだけの対価を持っていないからってことで間違いない?」 そう聞いてくる男に、恐る恐る頷く。 今度は何を言い始めるのかと、男から視線を離さずに警戒を続ける。 「つまり対価を作ればいいわけだ」 「……は?」 「俺が欲しいものをくれれば、受け取ってくれるってことでしょう?」 うん……うん?? なんだか話が変な方向に曲がって行ったような気がする。 そもそもこんな広いところに住んでいるような男にとって欲しいものなんて、大抵お金で買えてしまうんじゃないか?と思ってしまう私はまた頭を悩ませる。 それともここで稼げということだろうか、外には出られないから。 「俺が欲しいもの、わかる?」
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