一章 🏥 1 🔪🔪🔪

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私の脳裏をかすめるのは、あの小さくて爪の長くて群れてチョロチョロと動き回っている、あの動物。 背筋ピーンと立って警戒心も丸出しのあの……ハクナマタタ。 「警戒心強いし、ちょっと凶暴だし、なんかちょろちょろしてたり、でもこんな所に自ら囚われに来ちゃうほど好奇心旺盛」 まって、私のこの選択は好奇心で片付けられてしまうの……??? 何かを思い出しているのか、ククッと笑っている彼の肩が細かく揺れ、響いてくる。 残念ながら私はそんなちょろちょろしている覚えは全くない。 凶暴と警戒心は、そりゃあ殺しに来ているんだから認めるしかないけれど……好奇心で片付けられてしまうのは解せない。 お前に興味は毛頭ない!!! 気が済むまで笑ったのか、スーっと大きく息を吸い込み、はぁとため息を吐く音が耳に入る。 待て、そこで深呼吸するな変態、いい加減首元から離れやがれクソ猫。 「こんなに穏やかな日常が送れる日が来るなんて思わなかったよ」 「こっちは殺しに来てるんだけど!!?何その認識バカにしてんの!!?」 あぁ!もう!!この男と一緒にいるとほんと感情がわけわからなくなる!!! 今度は空いている手が私の頭をよしよしと柔らかく撫でてくるので、本当に一遍死にやがれと強く思った。 イラ付いた気持ちを主張するために首を振りゴツンゴツンと男の頭に頭突きをかますが、こちらの脳の奥が揺れて頭突きした部位がダメージを食らうだけで、男へのダメージはほとんど確認できなかったので、また悔しさが募る。 男の反対側を向けば、先程まで私の手に握られていたはずのその刃が、キラリと怪しく光を反射している。 うん、私は間違いなくこの刃を、寝ていた(はずの)男に突き立てようと、背後から腹目掛けて振り下ろしたはずだった。 先程までの記憶に間違いはない、あれが証拠だ。 包丁はもう何度も何度も試した。 そりゃあもう初期の初期からの相棒であり、二度程刃も折れて、今床に落ちているこれが三代目だ。 紐になるものを探して背後から首も絞めようとしたし、泣き落としで隙を作ろうとも、ハニートラップ的なのだって一度は試したけれど……あれは、うん、今後はもう絶対しない、それ以上の犠牲が出た、絶対間違っても今後色気は武器にしない。 袋を頭に被せて窒息死だって狙ったし、シャワーを顔面にかけて窒息、最悪そのシャワーヘッドで殴ったりお湯まで溜めて準備万端に整えたりもしたのだ。 その全てを尽く躱されて、今に至る。
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