2 🔒🍌☕️

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男の言葉を聞いて、ゆるゆると思考が働き出す。 『アイツの処分はこっちでしちゃってるから、君には会わせられないけど』 『……』 『まぁ、会いたくもないだろうけどね』 頬をつぅ……と流れ落ちる涙は、一体この男のどの言葉に反応したのか。 どの気持ちがどう動いたのか、その時の私の感情は色々なものがぐちゃぐちゃと混ざり合っていて、把握し切れなくて、わけがわからなくなっていて。 もう、本当はなにも考えたくなかった。 ただ痛みの一点に注意を向けてしまいたくて、他のことなんてどうでもいいとすら思っていた。 そんな私に、新たな選択肢を与えたのが、この男。 『君は、復讐したいと思う?』 『ふく、しゅう?』 ごちゃごちゃとした濁り混ざり合う思考の中に、一点の言葉がポツリと現れる。 『憎しみは?悲しみは?悔しさは?』 『……』 『処理しきれないその気持ちを、ぶつけたくはならない?』 ぶつけていた。 ずっとずっと、あの日からずっと、ぶつけてはいた、どうにもならないこの虚しさを、喪失感を、寂しさを、悔しさを……。 でも、どんなにぶつけたって、楽にはならなかった。 息の詰まるような苦しさが、増すだけだった。 鈍器で殴られたような重苦しい頭の痛みが、毎日毎日朝から晩まで、永遠に続くんじゃないかと思えるくらい、ひたすらに、重くて、痛くて、苦しくて……寂しくて。 ほろりほろりと、頬を伝う雫を、彼の指先がすくい上げる。 『俺に、ぶつけていいよ』 その言葉の意味を、最初は理解できなかった。 理解……してはいけないものだと、思っていた。 けれど。 『殺したいなら、殺してもいい。俺はアイツの責任者なんだから、君にそうされたって文句はない』 なにを、言っているのか。 この男は私に一体、何をさせたいのか。 何を思わせたいのか、何が目的なのか。 純粋な疑問が、頭の中いっぱいに占める。 だってそんなこと……普通、自分のことを殺してもいいなんて言う人、いないから。 『殺す……?』 人を? この人を……? この男は、なにを考えているの? 『自分だけが被害者だなんて、不平等だろう?こちらも同等の報復を受けるべきだ』 『……被害者?』 『君は被害者だよ』 被害者という言葉に、ドクリと鼓動が跳ねる音が聞こえた。 ドクドクと心拍が主張する、私は被害者なのだと、体ごとその言葉に反応している。 『だからといってこちらも簡単には殺される気はないけどね』 その言い分に、被害者意識の芽生えたばかりの私の心が拒絶を示す。
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