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War2:What's IDOL?
寒さも厳しい12月上旬。
突然上司に呼び出された。デスクの椅子の背もたれにかけていたパーカーを羽織って部屋を出る。この改装したてのビルの2フロアが僕の働く会社、中堅の芸能事務所だ。
外壁も内装も新しくして綺麗になったが相変わらずエアコンの効きは悪い。
「おっ!きた!千遥くんっ」
ドアを開けるといかにも業界人らしい風貌をした部長の戸川がいた。
『あれ?もしかして、、またハワイですか?』
「ビンゴ!はい、これお土産!」
ハワイ名物チョコレートを渡される。今年何個目だろうか。日焼けの跡が元に戻る余裕もなくハワイへ行ってる戸川さんはこの会社の部長で見た目はチャラいがヤリ手の業界人だ。
戸川さんには感謝している。
何を隠そうこの人は僕がアイドル時代にお世話になった以前の事務所の人で、今ここで働けてるのは彼のおかげ。部長と呼ばないで苗字呼びはその頃からのせい。
「言っとくけど遊びじゃないよ〜仕事で行ってきたんだから」
『別に遊びって言ってないじゃないですか。それで、、、話って何ですか?』
「あっそうそう。千遥くんにぴったりの仕事があってさ。まぁ座ってよ」
そう言うとカバンからゴソゴソと取り出してきたのは写真のついた数枚の資料とデモCD。目の前に一緒に置かれていた紙を手に取る。
『何ですかこれ?』
「実はクリスマスにデビューする予定のボーイズグループがいてね、彼らの担当を千遥くんにお願いしたい」
『えっ!?僕が…ですか?』
戸川さんの顔を見るとニヤニヤしながら顔を近づけてくる。
「だって千遥くん元アイドルでしょ?ほらうちの事務所はまだアイドルグループいないから他の人も勝手がわからないだろし」
確かにうちの事務所は俳優、女優、タレントだけが所属していて、事務所だって大手事務所とは言えない。経験豊富なスタッフもまだ少ない。
『いつの間にこんなプロジェクトを……』
「内密に進めてたわけよ。それでどう?是非やって欲しいんだけど」
『まぁ……戸川さんのお願いなら。だけどクリスマスって急すぎじゃ!?』
「それなら大丈夫。準備は万端だから!とりあえずその資料に目を通してCDも聴いておいてね!」
資料とCDを持って部長室を出る。戸川さんの思い付きは今に始まったことじゃないが、だからと言って闇雲に事を進めるような人ではない。
『ボーイズグループか、、、』
もう忘れかけていたアイドル時代を思い出した。あまり気が乗らないのはアイドルグループの大変さを知っているからで、否が応でも自分のあの頃と結びつけてしまうんだ。
『えっと…ディ…パー……ズ?』
グループ名は"DeeperZ"12月25日デビュー。そう書かれた資料を持って冷んやり冷たい廊下を小走りでデスクに戻った。
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