いつかが咲く

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桜木町に魚が降ったと、全国ニュースが面白おかしく伝えていた。 一時間前に送った彼女へのメッセージは、まだ既読にもならない。 最近、彼女と交わした言葉の数を思い浮かべようとして、すぐにやめた。 片手で数えられてしまう。 付き合い始めた三年前の春は、交わす言葉が多すぎて、いつも時間が足りなかった。 それなのに、今は、普通の言葉もふたりの間をうまく行き来しない。 いつからすれ違いは始まっていたのだろう。 何が切っ掛けだったのだろう。 それはたぶん、ふたりを取り囲む、総てだったのだろう。 趣味の違い、日常生活の些細なちぐはぐさ、使う言葉に込められたニュアンスの温度差、どう、この世界を見ているか。 メッセージアプリを開いてみる。 何かの気配を察したように、メッセージが既読になった。 彼女からの返信があったのは、それから四十分後。 『いらないよ』 こぼれ落ちる涙を止められないまま、僕はすべてを終わりにしようと思った。 約束は、叶えられなかった。
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