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『わたしたち、ダメだったね』
終わりが来たことを受け入れて、僕はうなずいた。
それを見た彼女の瞳から、大きな涙が落ちた。
『ごめん、今日は駅までひとりで行くね』
僕は、うなずくことしか出来ない。
僕も、泣いていた。
『明日からは、朝も、別だね』
うなずく。
彼女は笑うように泣きながら、手を振って、僕に背中を向けた。
彼女が一歩、一歩、遠ざかっていく。
いつまでも、最期まで、一緒にいると思っていた人が離れていく。
ここで呼び止めなければ、僕らは終わってしまう。
分かっていても、放つべき言葉が何も思い浮かばない。
彼女が少しずつ、少しずつ、しかし決定的に離れていく。
辛すぎて、背を向けようとしたとき、彼女の足元に淡い色の何かが落ちた。
急に陽射しがさして、あたりを明るくする。
ふわり、ふわり、とそれは増えていく。
彼女も気がついて、立ち止まる。
彼女の足元、そのまわり、さきの横断歩道や植え込みが淡い色で埋められていく。
それは、空から降ってきていた。
僕と彼女は同時に空を見上げた。
青空から、何千、何万の花が降り注いでいた。
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