奇妙なお茶会

11/13
前へ
/54ページ
次へ
____「雪、どういうつもりなの?」  午後のショーを鑑賞し終えた頃、倫が訝しげに私を見た。  あまりにも私がグイグイ倫に近づくから、半ば2対2の別行動と化している。  遠くの方で歩く一馬さんと笛木さんの美しい後ろ姿を眺め、脱力したように笑った。 「どういうつもりって?」 「なんで急に俺にモーションかけてくるの?」  直接的な言い回しにドキッとして、なんて答えていいかわからない。 「……ごめん」 「いや謝らないでよ。なんか余計」  倫は真っ赤になって頭をくしゃくしゃ掻いた。 「なんか余計……揺らぐ」  いつもの倫じゃないみたい。  切なげに目を伏せる表情はどことなく色気を醸し出し、まるで映画のワンシーンのように目を奪われる。 「どうせ笛木になんか言われたんでしょ?」 「違うよ。もう、こんなことやめよう?」 「なんで」  倫は少し苛立っているようだった。 「雪は甘いんだよ。そんなんじゃいつまで経っても欲しいものは手に入らない。自分のこと悪役って思うなら、最後まで貫き通せよ」  私はどこまでも中途半端な人間だ。  欲しいものがなんなのかわからなくなってしまった。  だけどひとつだけ、ハッキリわかっていることがある。 「これ以上倫が悪役になってほしくない。倫は私にとってヒーローだから」  いつも私のことを救ってくれたから。 「なにそれ」  倫はポカンとして固まった。  だけどすぐに顔をくしゃっとさせて、嬉しそうに笑ってくれる。  その笑顔を見るだけで、驚くほど心が満たされていくのがわかった。 「倫。このまま私と」  言いかけた瞬間、勢いよく子供の泣き声が響いた。  びっくりして顔を見合わせて、すぐに声の主のもとへ駆け寄る。  幼稚園生くらいの小さな男の子が、たった一人で手で涙を拭いしゃくり上げていた。 「迷子かな」  倫の一言に背中を押されるようにして、しゃがんで男の子と視線を合わせる。 「大丈夫だよ。待ってて、一緒におうちの人を探すから」  しかし男の子は私を見た瞬間、青ざめて再び大声で泣き出した。 「うわぁぁぁ!まじょだぁー!あっちいけー!」 「………………」  今のは流石にこたえた。  必死に愛想笑いしてるけど、私だって泣きたい。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加