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____「あー、怠いわ。仕事したくない。また朝からアイツの顔見るのツラ」
「なんでもかんでも黒岩に結びつけんのやめなって」
「だってムカつくんだもん。仕事めんどいのも眠いのも、全部アイツのせいにしちゃえ」
「まあ、確かになんか辛気くさいよねあの人」
洗面所で話しているのは、同じ部署の鈴木さん達か。
まさかその黒岩が、早朝オフィスのトイレ個室で腹痛と闘っているとは思わないだろう。
昔から患っている過敏性腸症候群が治らないでいる。
「アイツさ、お局だからって調子こいて小言言ってくんのよ。うざいったらない。ちょっとメールの打ち間違いしただけで詰めやがって」
……ちょっとじゃない。
しつこいですが先方もだいぶ困っているようで。
それに、詰めたつもりはないんだけど。
「レイナが若くて可愛いから嫉妬してるんだよきっと」
「まあ、そんな気はしてたわ。女の妬みって怖いね」
確かに若くて綺麗だなとは思っていたけど、妬んでいたつもりは。
いや、無意識下で妬んでいたんだろうか。
それが顔に出てしまってるんだろうか。
ああ、ますますお腹が痛い。
お守り代わりの、細菌マンのアクリルキーホルダーを握り締める。
細菌マン。子供の頃から続いている国民的アニメの悪役。
見た目は丸っこくて可愛いのに、菌というだけで悪にされるなんて残酷だ。
菌は、善玉だっているのに。
今朝飲んだビオフェルミンを思い出し、お腹をさすった。
『サイキンキンキンサイキック』
細菌マンの決まり文句を心の中で唱えながら、彼女達が居なくなった数分後、何とかトイレから出ることができたのだった。
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