13人が本棚に入れています
本棚に追加
餃子の皮に、なんというのだろう、存在感がある。中身のもしつこくなく、とてもさっぱりしていて、食べごたえがあった。何より、一つ一つの餃子の大きさが、お腹もだけれど、ハングリーだった彼女の心を、これでもかと満たしてくれている。あまりにおいしすぎて、用意していたお醤油を、付け忘れていた! 餃子だけを今日は食べているのに、なんてハッピーなんだろう! 食べても食べても飽きない、いくらでも食べられると感じていたら、またたく間に夢中で、買ってきたものを食べ終えてしまった。
「ごちそうさま、でした……。」
彼女は、食べ終えて。ちょっとした恍惚にも似た、うっとりとした心地で、ぼんやりと思う。
(こんなにもおいしい餃子を、好きなだけ食べられたらなぁ。)
はあ。と、ため息をつこうとして。
──いやまてよ、と。彼女は、きっと誰もが驚くことを思いついた。
(この餃子以外の食べ物を〝ぜんぶ食べないで、我慢する〟。その代わり、〝この餃子だけは、好きなだけ食べる〟。どうだろう。)
なんと、そこまで考えが行きつくほど、屋台で買った餃子がおいしくて・おいしくて、おいしくて! ……たまらなかったのだ。なんだかもう、好きなものをこんなしあわせに食べた気持ちの、まんぷく感とは別で。本当に、さび色になりかけていた心が、少しずつ、確かに、さまざまな色に彩られて、キラキラと、きらめきだしたかのような。本当に久しぶりに、食事に感動をしていた。
その通り──。辛い食事制限に、むしばまれていた彼女の心は、魂は。ほのぼの屋台にある、おいしい餃子。光を、見つけたのだ。
*
最初のコメントを投稿しよう!