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エピソード1・「おいしいものを好きなだけ」
大好きなものを、好きなだけ食べられるって、本当にしあわせだ。大好きなものでなくても、食べ物をお腹いっぱい食べることは、本当にしあわせで、恵まれたことだ。
けれど、彼女は病気で、とても辛い、厳しい食事制限を強いられていた。
「もうどうなってもいいの。食べ物を自由に食べられないって、こんなに辛いのね。しんでしまってもいいと思ってる」
それはもう、心底辛いのだ。人間が生きていくうえでの三大欲求のうち、食欲を自由に満たすことが出来ない。思うように生きることが、ことごとく出来なくなっているということ。
〝しんでしまってもいい。〟
心の底から、しみじみ思ったのだろう。人は、生きているうちにしんでしまってもいいと思うことは良い条件でも悪い条件でも、ありえることだ。けれど、彼女は自分の人生に見切りをつけだし、諦め悟っていた。
それでも、周りの人々は、思ってしまう。本人が、どんなに本当に苦しく辛くても。
どうか、生きて欲しいと。
前が見えなくなりそうになった彼女の人生には、希望──光が必要だった。元気だった頃、子どもの頃。毎年誕生日を迎えるごとに、ロウソクが増えることが楽しみでしょうがなかったころのような、日だまりのような時代にあった。確かな、光。
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