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うなぎの滅亡が近い件
TOKYOを貫いて走る一級河川の荒川には、岩々に囲まれた出島があります。
島の中央に飾られているのは「月を射る」という赤茶けた円筒状のモニュメント。
突き出たトゲは、まるで空の一点を狙い撃つ矢のように見えます。
そこには霊的な力が集まると、ほどほど昔から言われているそうな。
その川辺に舞い降りたのは、やんごとなき存在である、魚神カイゼンです。
魚神は川に向かって号令をかけます。
「うなぎたちよ、集まれ、集まれーい!」
呼ばれたうなぎたちは続々と集まってきます。上流から下流から、水底の岩々の間を縫うように。
出島の湖面はざわざわと騒がしくなってきます。たくさんの半助(うなぎの頭のこと)が水面から顔をのぞかせます。
「よく聞くがよい。お主たちにはかつてない危機が訪れている」
「危機、っすか!?」
ひときわ大きい、脂の乗ったうなぎが尋ねます。彼の名はシュン。
「さよう。お主たちを絶滅危惧種IAに指定するかどうか、人間界では激しい議論がなされているのだ」
「なっ、なんと! それは一大事ではありませんか! IAに指定されてしまえば、うなぎの究極の願いである、『人間に食される』という願望が叶わなくなってしまいます!」
兎にも角にも、人間に食されることは全鰻類にとっての切なる願いでした。
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