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魚神とすれば、うなぎの個体数の減少は己の責任です。けれど、これで失敗は取り戻したはず。産卵フィーバーを見届けさえしたら、過去の失敗の清算は済んだも同然です。
水中で杖を振り上げると、魚神の姿はしだいに薄くなり、いつのまにか紙や葉のように消えてしまいました。
「そんな殺生な……」
路頭に迷ううなぎたち。これは有事も有事、ユウジロウでございます。
けれどそんな彼らを見て助け船を出す者がいました。
砂底から次々に姿を現したタコたちです。
「うなぎさん、うなぎさん、揃いも揃ってどうしたの」
「たこさん、たこさん、騙された、魚神様に騙された」
「そうかい、そうかい、それは難儀なことだねえ。お困りごとがあるのですかい」
「俺のつれ、水面から飛び上がる力がないんだよ。力を貸してくれないか」
「よかろう、よかろう、うなぎさん。だけど物々交換だ」
タコは足を使ってハサミを真似てみせます。
「了解だ、了解だ。タコさんの好物、了解だ」
オスのうなぎたちはいっせいに散らばり、すぐさま獲物を捕らえてきました。花果のように鮮やかな色合いのカニたちです。
「いててて、いててて、早く受け取っておくんなせい」
うなぎの鼻はカニのえじきとなっています。
「ありがてえ、ありがてえ、こいつはうまそう食べ頃だ」
「ところで、エビとカニ、どっちが美味いのだ」
「それは上白糖とハチミツのどっちが甘いかという議論に似ているな」
もはや脈絡もへったくれもありません。
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