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空を飛ぶうなぎたちの件
タコはカニをひっぺがえし腕で締め付けました。カニに逃げるすべはありません。
「絶対に水面まで送り届けてみせる、じっちゃんのカニ懸けて!」
タコは理解不能な気合いの入れ方をしました。
いや、ただ単に作者がそう言いたかっただけなのかもしれません。
そうこうしているうちに、海はさらに荒れてきました。はるか頭上の海面がざわめき始めます。しだいに海が渦を巻き、海水が天に向かって登ってゆきます。竜巻が発生したのです。
「この機会を逃すな、皆行くぞ!」
カニを食し満足したタコたちは、岩場に足を貼り付け体を引っ張るように伸ばしました。
「狙いは竜巻の中心部、目標地点の気圧は930オクトパスカル!」
「タコだけに単位はオクトパスカルですか!」
タコは勢いよく自分の体を後方に引っ張ります。メスのうなぎたちはタコの足の間にセットされました。
「グッドラック!」
「なんでニホンウナギに英語!? 欧米か!」
タコは力強く、瞬発的に腕を縮めます。背中を押されたメスのうなぎたちは、水上に向かって勢いよく上昇しました。オスのうなぎたちも疾走します。
ざっぱーん!
うなぎたちは水面に飛び上がると竜巻にのまれていきました。
「やったか!? ――いや、だめだ!」
明らかに揚力が足りません。一度は空高く舞い上がったものの、すぐさま水面に向かって下降していきます。
「ちくしょう、なんで俺のボディーは丸っこいんだ!」
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