長旅の果てに、の件

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長旅の果てに、の件

★ そしてうなぎの大群は荒川を下り、東京湾を抜け、太平洋へ飛び出します。身をさらうような黒潮をかいくぐり、急峻な大陸棚を滑り降り、遠い遠い南の海へ向かっていきました。 「なんだなんだ、いったいなんだ」 砂の中に潜むカレイたちは驚き飛び上がりました。けれどうなぎたちは目もくれず華麗にスルーしてゆきます。カレイだけに。 アイゴの群れがうなぎを眺めながらすれ違ってゆきます。 「ゴーゴー潜水、ナナゴー潜水!」 「ああ、エールを送ってくれてありがとう。俺たちはうなぎ(EEL)だけに。∈(゚∈∋゚)∋」 うなぎたちは応援にウナがされ、暗い水底を濁流のように進んで行きます。ときには互いにヒレを取り合いながら。 そしてついにマリアナ諸島の近海、うなぎのふるさとに着きました。 うなぎの軍勢は約束の場所を目指して、深く深く潜ってゆきます。 「サワコ、体の準備はできてるのか」 「もう待ちきれないくらいよ!」 サワコは膨らんだお腹を誇らしげに見せます。 そしてたどり着いた約束の地。うなぎたちは愛の巣をこしらえ、たくさんの宝石のような子を産み落としました。 見たことのないほどの、無限産卵です。 大群の放った無数の卵たちは海を漂い、まるで天の川のようにも見えました。
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