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魚神の裏切りの件
「シュンさん、ここまで来てくれてありがとう」
「なんてことはないさ。だがお前は大丈夫か」
「疲れたわ。ちょっとだけどね」
サワコはフラフラとしてヒレがおぼつきません。なにせうなぎは卵を産むと死んでしまう運命なのです。体力はもう残っていないはず。
そのときちょうど海が荒れ始めました。波が躰を揺らし、繋いだヒレを引き離そうとします。二匹は離れまいと必死にヒレを取り合いました。
そこで海底に降り立った魚神は疲労困憊のうなぎたちに向かってこう言います。
「よいか、矢風の預言によれば、あと15分後に海面で竜巻が起きるはずだ。そのタイミングを狙い、空に向かって一気に跳ね上がるのじゃ!」
「「「「「ウナッ!」」」」」
オスのうなぎたちが次々と水面を目指します。けれどメスのうなぎたちは産卵で失った体力が戻りません。水面を目指す力はもう、残っていないのです。
「シュンさん……私はもうだめ。あなただけでも行ってちょうだい」
「サワコ、そんなことできるはずがない。俺はお前がいたからここまで来られたんだ」
シュンは魚神を見上げて懇願します。
「なんとかなりませんか、魚神様」
ところが魚神の表情は冷たいことこのうえありません。
「いや、サワコの願いは叶ったじゃろ。人間に食されたいってグダグダ言ってたのはシュンのほうじゃから、ひとりで飛べばいいんじゃね?」
「はぁ!?」
「まっ、ワシの目的は達成した。というわけで、ここでおいとますることにした。せいぜい頑張るがよい」
「なっ、なんですとォォォ!」
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