自覚と嫉妬

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「わっお前、何、出てきてんだよっ」 先に出てきたイケメンを押しのけるようにして、赤茶色の髪の男が顔を出した。 赤茶色の髪の前髪をかき上げる様にして顔を見せる。 「だって、俺も比嘉君見たいっ」 シャツに手を通しながら、赤茶色の髪の生徒は「俺、俺行く」と慌てて飛び出して来た。 「ちょっ、梓っ」 「比嘉君。行こう」 ニコニコ笑って、俺の肩を抱くようにして歩き出した。 梓って言わなかった? え? この人が梓先輩? 腕を通して前が全開になったままの生成りのシャツの下には派手な柄のTシャツ。だけど、その鎖骨に見えたのは明らかに付けたばかりの赤い鬱血。 「梓っ」 「またな~」 ケタケタと笑いながら、「急いで」と俺を促した。 後ろから足音はしないからさっきの生徒は追いかけてはいないのだろう。 「あの、梓先輩ですか?」 「うん。桃香梓。比嘉響君だよね?」 自分の名前を名乗っていないことに気が付いて、慌てて自己紹介した。 「へぇ~。噂でしか聞いてなかったから会いたかったんだよね~」 いや、俺も噂でしかあなたを知りませんでしたけど。 世話焼きで優しくって、桃香先輩の通訳。
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