自覚と嫉妬

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こんなに……色気のある人とは思ってなかった。 いや、まあ、あんな格好で人気の無い教室から出てくるって事はそういうことをしていたんだろうけど、なんていうか……色気がある。 「俺の噂って?」 「ん? 美人って聞いてたから」 「ああ……それ、あんまり嬉しくないです」 「そう? 美人だよ。カズオミも言ってたし」 「カズオミ?」 誰? 俺が聞き返すと、梓先輩は首を傾げてその赤い髪がサラサラと流れた。 「一臣。同室だよね?」 俺と同室なのは桃香先輩……下の名前知らなかった。 「桃香先輩って一臣って言うんですね」 「知らなかったの?」 「聞いてないですし」 「何、一臣、比嘉君にも話ししないの?」 「全くしないですよ」 あれからしつこく挨拶をして、しつこく声を掛けて、質問をするのにことごとくスルーされている。 「一臣もいい加減子どもだよね~」 スルリと肩から手を離して、「休日の校舎で何してたの?覗き?」と笑った。 「いえ、違いますから。叔父の後藤先生に会いに来ていただけです」 「ああ、後藤先生ね。叔父さんなんだ。似てないね」 「後藤先生は母の腹違いの弟なので血の繋がりは無いんです」
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