自覚と嫉妬

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赤茶色の髪が夕日に照らされて燃えるように赤く染まる。色の白さが極まって息を呑むほどに妖艶に見える。 情事の途中だったのだろうと安易に想像できるけど、この人はそれを抜きにしても色気が漂っている。 「さっきの人はいいんですか?」 追いかけては来ないけど、あんなふうに置き去りにしても良いんだろうか。自分がその要因になっていることにも後ろ髪を引かれる。 「いいの。いいの。どうせ寮に帰れば一緒なんだから」 「え?」 この人と同室ってことはさっきの人はA寮の園田寮長だ。 叔父さんが桃香先輩と人気は変わらないと言ってたけど、なるほどワイルドなイケメンだった。 それに、『素行』の意味も十分理解できた。 「さっきのが園田だよ。僕のところの寮長」 「恋人……ですか?」 「うーん。ちょっと違うかな」 表情が少し曇る。 「園田とは違うから」 「それって、桃香先輩ですか?」 恋人に望んでいるのは園田先輩じゃなくて、桃香先輩の方なのだろうか。 身体の関係だけってことだろうか。『ちょっと違う』とはどういう意味だろうか。 「違う。違う。何か勘違いしてる。園田は俺だけの物にならないってことだよ」
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