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ずらりと並ぶ下駄箱の間を通って靴を脱ぐと来客用のスリッパを取り出して履いた。
「比嘉響か?」
頭の上から声がかかり俺は慌てて顔を上げた。
そこに立っていたのは俺より少し背の高い制服を着た生徒だった。
こんなイケメン初めて見た。
真っ黒な艶のある黒髪と二重のきりっとした双眼。薄い唇。
そして、その声。
「は、はい。比嘉響(ひがきょう)です」
その声に俺は一瞬で虜になった。
低すぎず心地いい声音。ボソリと話す声がハスキーで魅力的だ。
「付いて来い」
それだけ言うと生徒は歩き出した。俺は慌ててその後を追った。
「あ、あの」
その背中に話しかけるが、返事はしない。スタスタと早足で歩くのについて行くので精一杯だ。
その声を聞きたいのに。
置いて行かれないように着いて行くがその生徒はすぐに扉の前で止まり、その扉をノックするとドアを開いた。
俺を振り返って中に入るように視線で促した。
喋れよ。
促されるまま中に入るとそこは職員室だった。
生徒が授業中ともあって、教師も授業に出ていて数人しか残っていない。
「ああ、桃香(トウガ)君ありがとう」
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