自覚と嫉妬

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「B寮は勉強会までやって必死になってますけど、無駄になるって事ですか?」 「まあ、そうなるね。別の副寮長を指名すれば解決するだけなのに」 別の副寮長。 「響ちゃんがやればいいのに」 「いや、俺は来たばっかりだし」 まだ編入して間もないのにそんな大役は引き受けられない。 「成績も優秀って聞いてるし、美人だし、俺なんかの心配もしてくれるし。何より一臣が追い出してない」 「それは、俺は美人じゃないし、心配も……それに今は部屋が空いてないだけだから」 「部屋は空けようと思えばいくらでも空けられるんだから、一臣も満更でもないってことじゃないのかな。美人は目の保養にもなるしね」 立ち止まると俺のほうに振り返って、顎を突いた。 その指先を視線で追うと梓先輩は自分の鼻を指差した。 何のサインだろうかと見上げていると、大きな足音が近づいてきて、梓先輩の肩に手が置かれると同時に力で振り返らされた。 「見つかった」 にっと笑って梓先輩はその胸に背中を預けるようにして腕を回した。 「僕は道案内をしただけだよ。一臣」 背中から抱き支えるようにして梓先輩を抱き締めているのは桃香先輩だった。 「ねえ? 響ちゃん」
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