感情

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感情

桃香先輩は「ああ」と、返事をしてくれるようになった。だけど、それは2きりの時だけだ。 徐々に桃香先輩の言いたいことが理解できるようになって、会話は無くても困らないほどではあるけど、俺的にはその声が聞きたいからしつこく質問を繰り返している。 そして、桃香先輩が大の甘党であることを知った。 叔父さんがプリンをくれて仲良くしてもらえといった意味がようやく分かった。 今朝も俺のネクタイを背中から結んでくれた。 春と一緒に教室に向かう。 「響ちゃん」と俺の席のすぐ後ろの教室の入口から声がかかった。 ちゃん付けで俺を呼ぶなんて人間はここ数日で出会った人の中にはこの人しかいない。 「おはよ~」 そしてこの間の空いた喋り方……。 俺はゆっくりと振り返った。 「響ちゃん、ちょっといい?」 「……はぁ」 俺は返事をしながらにこにこ笑っている梓先輩の後を追った。 梓先輩は俺を教室から少し離れた廊下まで連れてくると、「一臣喋った?」と聞いた。 間違いなくこの人が俺と喋るように促したんだと確信した。 「俺は自分で話をしてくれるように努力するから必要ないです」 「あれ? 一臣喋ったんだ」
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