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「まあ、『ああ』とかだけですけど、返事はしてくれましたから」
「へえ、すごいね。僕に言われて喋るなんて一臣も随分凹んでるんだね」
「どういう意味ですか?」
「一臣は僕の言うことなんて聞かないから、なのに喋ったってことは、僕の言うことを聞いてもいいくらいには凹んでるってことだよ」
「何で桃香先輩が凹むと嬉しそうなんですか?」
「別に嬉しいってわけじゃないけど」
何かを含んだ言い回しにイライラする。
「B寮の歪は大きいみたいだね」
それは昨日叔父さんからも聞いた。
桃香先輩が喋らないことで生まれる歪。
「このまま桃香が喋るようになったらいいんだけど」
その言葉で気が付いた、この人は元副寮長としてちゃんとB寮のことを気にかけているんだと。
俺と喋ったという事は、桃香先輩も喋らざるを得ないと確信しているんだということだ。
「僕がいつまでも一臣のそばにいちゃダメなんだよ」
「……でも、それは俺じゃ出来ないですよ」
「どうかな。一臣は喋ったんだから」
「それは、今、俺が側にいるからであって、また人が変われば……」
副寮長が決まるまでは俺は部屋の移動が無い。
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