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翌日――――――
圭はとあるカフェ&バーに朝から来ていた。
カウンター席とテーブル席が3卓のこじんまりとした店。
この店は、オーナーの『朝から煙草を吹かしながらおしゃれに酒が飲みたい』という目的で作られた、趣味と実益を兼ね備えた自己満足の店だ。2階3階が住宅になっており、オーナーと店長がルームシェアしている。
オーナーは皆城由貴。
本業はプロのバイオリニストで、世界各地でコンサートをしている著名な人物だ。
趣味と実益の自分勝手な店なので、オーナーの由貴の気分次第で店内で演奏したりもしている。
そこのカウンター席に座り、圭は高校からの友人白河凛々子に昨日の胸キュンイベントの相談をしていた。
往来の真ん中で、男の子に抱きしめられ、愛の告白をされた―――。
凛々子はおなかを抱えて笑っている。
「まじ笑えるっ…。少女漫画じゃんっ。」
店長の安西彰も口元を手で覆い隠し笑いを堪えている。
「笑うな…」
当の本人は笑いごとではないのだが。
数年ぶりに発生した胸キュンイベントに、どう対処したらいいのか困惑している。このところ、彼に振り回されていると言っても過言ではない。
「圭にも白馬に乗った王子様が現れたのか~、…うけるっ」
目じりに涙をためるほどに笑う凛々子に、安西はアイスティーを差し出した。
凛々子はアイスティーで口を湿らせ、目じりの涙を拭う。
「はぁ…。由貴がいなくてよかった。」
安西もアイスティーを飲みながら話しを聞いている。
オーナーの由貴は現在ヨーロッパ講演中だ。
そして、圭の友人兼大ファンなのだ。圭に男の影が…!!となると大騒動がおこるに違いない。
「で…?どうなんですか?かわいい子なんでしょう?」
幾分か呼吸の落ち着いた安西が問いかけた。
「王子様イケメンが結構まじに告ってきたんでしょ。振るのは勿体ないな~。とりあえずのキープ。安西さん、どう思う?付き合ってから惚れるもありじゃない?」
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