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すぐ来た。
本当にすぐに来た。
びっくりするくらい、すぐに来た。
決してストーキングしていた訳ではなく、自宅が近所なのだ。
GPSアプリを入れたりは、していない。
まだしていない。
店は安西の粋な計らいで、closeとなっていた。
オーナーが自由人なので少々の勝手は許されている。
「こんにちは…」
入るなり圭と目が合ったので、きらっきらした王子様笑顔を送る。
「いや~、ちょーかわいい子じゃん。」
「いや、ちょっと、若い。え、学生さん…?」
凛々子と安西が各々充哉についての感想をの述べる。
充哉は圭の隣に座り「こんにちは」と顔を覗くように小首をかしげる。
「…こんにちは」
気まずそうに挨拶する圭を〝かわいいな~。食べてしまいたい。〟と考えながら見つめる。
「何飲みますか?紅茶?コーヒー?ジュースもありますよ。」
安西がドリンクメニューを差し出す。
筆で書かれた文字、空いたすスペースには草花の水墨画が描かれている。
その紙をラミネート加工しただけの簡素なつくりだが、文字や絵から製作者のセンスが垣間見えた。
「アイスティーでお願いします。」
「レモン?ミルク?」
「ストレートで。」
「はい、どうぞ。若いね。大学生?」
アイスティーをカウンター越しに渡しながら、安西は問いかける。
「はい。19です。」
店内に天使が通っていった。
「これ、30ぞ?もうすぐ、31ぞ?」
凛々子が確認する。驚きで語尾がおかしくなっている。
圭ももちろん充哉の年齢など知らない。
「そうなんですか。でも、年齢なんて関係なくないですか?」
大人たちの驚きをよそに、充哉は淡々という。
圭が30だろうが14だろうが、かわいいものは可愛いのだから仕方ない。
かわいいは正義だ。
「うん。愛に年齢も国境も関係ないね。」
「いい子。いい男ね。」
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