⒈ 白緑の吐息

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二人は充哉を気に入ったようだ。 「圭さんを幸せにしてあげてください。」 「取り扱いが面倒くさいとこもあるけど、頼むわね。」 「保護者か…。他人事だと思って…」 ちらっと隣を見ると充哉と目が合う。 微笑むこともなく、頬杖をついたまま、じぃーっと圭を見つめている。 なぜか目を離せなくなる。 まつ毛が長い、少しくせっ毛で、意志の強そうな綺麗な瞳。 大人びてはいるけれど、人懐っこい笑い顔は大型犬の子犬のようで。 「ねぇ…」 息を吐くように充哉が言葉をつむぐ。 「俺のものになってよ。」 そっと手を差し伸べる。 充哉の目の奥にほんの少しぎらついたものが見えたような気がした。 「ねぇ…」 お前に拒否権はない。 そう言われているような気がして、圭はその手を取った。 「それは、イエスと取っていいよね?」 自分の手に重ねられた手をぎゅと握りしめ、子犬の笑顔で圭にだけ聞こえる声で「好きだよ」と囁いた。 〝愛してる。誰にも渡さない。一生手放してやらない。〟 .
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