⒈ 白緑の吐息

10/24
前へ
/133ページ
次へ
握りしめた圭の手を少しだけ引き寄せ、チュッと手の甲に口づけを落とす。 「大切にする…」 圭は真っ赤に顔を染めて「ハイ…」と声に出す事しかできなかった。 「話しはまとまったようね。お邪魔虫は帰るわ。」 見ているこっちが恥ずかしくなると、凛々子は退散を決意した。 鞄を持って立ち上がると、安西が慌てて声をかける。 「ランチの仕込みしてるのに…」 「彼氏君に食べさせてあげて。」 格好よく言ったが、お代は圭が支払う。 「ちょっ…凛々子」 圭が立ち上がり凛々子を呼び止める。充哉も立つと軽く頭を下げた。 「ご助力感謝します。」 グッドラックと親指を立て、凛々子はさっそうと店をあとにした。 手を振っていた充哉が急に圭に向き合うように立ち 「ぎゅっとしていい?」 と両腕を広げ、返事を聞く前に圭の身体を引き寄せ抱きしめる。 圭の肩口に顔をうずめ「大好き…」と愛おしそうにつぶやき 「幸せすぎて死にそう…」 ぐりぐりと圭の肩に顔を擦り付ける。 「充哉…さん?」 圭がおずおずと充哉の名前を呼ぶ。 バッと顔を上げ「いまの、ギュンってくる。」と無表情で言ったが すぐに表情を和らげて 「充哉でいいよ。俺も、圭ってよんでもいい?」 「うん。」 充哉の表情につられたのか、圭も柔らかく微笑んだ。 「お取込み中すみませーん。お食事できましたよ。」 .
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

293人が本棚に入れています
本棚に追加