⒈ 白緑の吐息

13/24
前へ
/133ページ
次へ
すると、奥から圭が顔を出し「なんで勝手にでるの…」と呆れたようにその 男性に声をかけたが、充哉を見た瞬間慌てて男性を奥に押し込んだ。 充哉の顔からあのかわいい笑みが消えていたのを見て、何か誤解しているのかもしれないと急ぎ近寄る。 「充哉…?」 充哉の服の裾を恐る恐るついっと引いてみる。 「……うん?」 口元は笑っているが、目が殺人鬼だ。 「もうすぐライブがあるからデータチェックしてただけ。家で仕事してるって言ったでしょ?それだけ。ディスコで話しするより、来てもらった方が進めやすいから来てもらっただけで、ほんとにそれだけで。」 口数の少ない圭が多くを一生懸命に話すものだから、なんだか可笑しくなり充哉は笑いそうになってしまった。 圭の顔を両手で包み込み、むぎゅっと押しつぶす。 「みゅっ…」 と変な声を出した圭を見てハハッと声を出して笑う。 「…かわいい。俺、怒ってないよ?」 そのまま、ふにふにと圭の頬の柔らかさを楽しむ。 「えっと、今のは…」 「花音(かのん)さん。私の相方…」 そう言った途端に、圭は考えた。 充哉は自分の仕事とかについて知っているのだろうか?と。 そうこうしているうちに、ギターケースを担いだ花音が現れた。 「ったくさー、男呼んでるなら先に言っとけよ。気まずくなるだろ。お邪魔虫はさっさと退散しますよー。データちゃんと送ってくれよ。」 花音は帰り際にちらっと充哉をうかがうように見て、圭の自宅をあとにした。 「入って」 圭は充哉を中に入るように促す。 「ちょっと待ってて、データ保存してくる。」 そういうと圭は仕事部屋らしきところに入っていった。 リビングは広く大きなテレビに何人用か大きなソファーとそれに合わせたローテーブル。天井は高く、ベランダはテラスになっている。 オープンキッチンにダイニングテーブル。 〝これが生活レベルの差か〟 と感嘆してしまう。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

293人が本棚に入れています
本棚に追加