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リビングの床を掃除ロボットがせっせと職務を遂行している。
広いリビングには観葉植物があるわけでもなく、ベランダに洗濯物が干しているわけでもない。きれいにしている、とは少し違う。
どちらかというと、生活感があまりない。
圭の入っていった部屋は扉が開けられたまま―――――
「入っていい?」
中で作業している圭に声をかけ、ちらっとのぞき込む。
「いいよ。」
「すご…」
何台ものモニター、スピーカー、マイク、キーボード
ギターも何本も置いてある。
圭は作業を終えて、キョロキョロと部屋を見渡している充哉を見ていた。
興味津々で少年のような表情をしていた。
「びっくりした?」
「いや、感動?」
にこっと笑い、圭の正面に歩み寄る。
「感動?」
「かっこいい。何かさ、生みだせる人って憧れる。」
「うん。」
「知らなかったんだ。」
「うん。」
「いや?」
「うん?何が?…まぁ、テレビでないし、出ても喋らないし。寧ろ、充哉の方が嫌じゃないのかなって…。」
立ち上がろうとした圭を遮るように距離をつめ、テーブルに手をつく。
顔と顔を近づけ「全然嫌じゃない。知らないからこそ、もっと圭のこと知りたい。」と真剣に告げる。
「歩き方とか所作とか声とか、一目惚れだもん。それで、こんなに好きなんだよ。もっと知ったらもっと好きになる。」
どこが好きなのか、なぜ好きなのか、そんなこと分からない。
初めて見たときに〝好きだ〟と感じた。
知らない相手をよく好きになれる、と言われたが、自分でも分からない。
だって、一目見て〝好き〟になったのだから。
そこに理論が必要か。
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