⒈ 白緑の吐息

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おでこに、頬に、目元に、キスを降らせ〝好き〟と〝かわいい〟を連呼する。 唇を啄むような口づけを繰り返され、圭の口からは時々吐息が漏れる。 もう少し深く…と思った矢先に、お湯が沸いたとやかんが鳴いている。 「いいとこだったのに…」 圭の腰を抱いたまま火を止めて、ティーポットのふたを開け、お湯をそそぐ、ふたを閉めて、砂時計を返す。 身体をピタリとつけたまま一連のことをやってのけるので「慣れてる…」と圭がつぶやく。 「だって離れたくないもん。」 やかんを置くと、また圭にすり寄る。 「…いい匂いがする。香水つけてる?」 甘えてくる充哉の頭を撫でながら聞く。 「うん。好きな人のとこに行くのに、おしゃれくらいします。」 肩で話されるとくすぐったくなり、充哉の身体をはなす。 すぐさま充哉に口をふさがれる。 充哉を引きはがすと不満そうに頬を膨らませ、砂時計が落ち切っていることに気づいた。 カップに紅茶を注ぎ「ソファー行っていい?」とカップをふたつ運ぶ。 ソファーに二人並び座り、お茶を飲む。 「…ちょっと渋い。」 「充哉が悪い。」 そう言うと、圭はお茶菓子を探しに行った。 キッチンから「クッキー食べられる?」「マカロンは?」と声がする。 「食べるー。甘いの好きー。」 お皿に盛りつけずに、箱のまま出すあたり〝らしい〟。 充哉はマカロンを口に入れると「おいひい」と目を輝かせた。 「おいしい?私あまいの得意じゃないから。」 飲み込むとちゅと口づける。 「甘い?」 いたずらっ子のように微笑む。 「…あまい。」 恥ずかしそうに口を隠し照れ笑う。 甘いあまい、マカロンより甘い空気が流れる―――――― 口づけの最中に「あ、」と充哉は何かを思い出した。 「ん…?」 とろんとした表情の圭は首をかしげる。 それを見た充哉は「かわいいっ」と抱きしめる。 「充哉…?」 「俺、今度のライブに行くんだ。知り合いに誘われてさ。」 「…え?」 「女友達なんだけど、そういうんじゃないから。」 「…は?」 「もちろん、食事とかいかないし。…妬く?」 「や…く…?」 眉間にしわをよせて首をかしげるものだから〝かわいい!〟とまたキュンとしてしまう。 「女の子と、は…ちょっと嫌?だけど、ライブ自体は見に来てくれるのは嬉しい。」 ポツリぽつりと話す圭を見て〝かわいい〟が止まらない充哉。
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