⒈ 白緑の吐息

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「ただ…最近の曲はほぼやらない、から…楽しくない、かも…」 〝かわいい〟が止まらない充哉は圭の頬を触りながら話しを聞いている。 圭も自然とその手に擦り寄り話すので、充哉の〝かわいい〟が爆発しそうだ。 「ベストみたいなの配信してたでしょ?勉強中。最近のと曲調ちょっと違うけど、ライブで聞いたらすごい楽しそうだなー、と思う。」 圭の頬をふみふみと触り堪能している。 まるで、猫や犬を撫でているように。 「危ないから…端っこ、壁際にいて。」 「危ないの?」 少し驚いて聞き返す。 「うん。たぶん、昔のノリでいくから、(ゆい)さんめちゃくちゃ煽る…。モッシュとか多いと思う。」 頬を触られているのが気持ちよく、圭はうっとりと目を細めている。 〝小動物みたい…〟と思いながら手は止めず話しを続ける。 「上手と下手の壁はすぐ埋まるから…後ろの方でいてね?」 「わかった。下手の後方ね。」 圭は少し目を見開き、自分の立ち位置を知っていてくれた事がうれしくて目を細めた。 仕事に関しては頑固というか意志が強いというか曲げないところがあるが、こと恋愛面に関して言えば押しに弱いというか流されやすい。 男性に囲まれての仕事が多いが、そういった関係になったことはなく、ひとりの人間として向き合ってくれる人に囲まれている。 メンバーとは付き合いが長く、出会ってから15年くらいになるだろうか。 お互いに良いところも悪いところも理解し、いい距離感を保てている。 その人たちに、この状況をどう説明すべきかは考えどころだ。 花音に見られた時点で、充哉との関係性はバレた。 口の堅い人なので、言いふらしはしないはず。だからこそ、なのだが。
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